気紛れで、我が儘で、妙に気位が高くて。
 扱い難さは今まで付き合ってきた男女含めて一番なのに、どうしてだか全て許せてしまう。
 クルクルと表情を変える万華鏡のような目が、じっと俺を捉えたまま逸れようとしないからだ。
 どんなに振り回されても、彼が俺を明らかに特別扱いしているのが分かるから。
 だから、俺は友人たちに呆れられながら、この猫のような恋人をいつだって甘やかしてしまう。

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星空

 山中の空は格別だった。
 いつもの薄ぼんやりとしたそれではなく、目に痛いほど鮮烈に輝いている。その上、見える量は段違いだ。
 …あぁ、吸い込まれそうだ。
 そんな眩暈にも似た感覚。
 瞬間、暖かな手に掌が包まれた。
 チラリと横目で君の顔を伺う。

「…帰ってこれなくなりそうだ」

 君は少し笑って、握る手に力を込めた。
 俺たちは、同じ事を思ったに違いない。


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 見下ろされていた。
 立った状態では俺の方が視界が高いから気がつかなかったけれど、こいつも立派に雄の顔をしている。
 少し、ビビる。

「…何強張ってんの」

 呆れたように笑われて、その見慣れているはずの笑顔さえ、俺の知らない色が。

「お前、エロ臭い…」

 訴えたら、一瞬きょとんとして俺を凝視さたが、すぐに弾かれたように笑い始めた。

「そりゃ、これからエロいことしますから」

 そうして笑いを引っ込めた男の顔には、先刻にも増した艶やかさが足されていた。


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リボン

 首に、赤と金の二本のリボンをつけていた。
 何の真似だと低く問えば、ヘラッと笑って見せた。

「…やぁ、実はまだ給料日前でね」

 でも何もないのも寂しいじゃない。
 つきあい始めて丸一年、それが今日だと彼は言った。
 もうそんなになるのかと妙な感慨を覚える。

「……さては忘れていたな」
「いや、多分更に悪い」

 気にしてもいなかった。
 なんて奴と喚く彼を少し眺めて、だったら来週までちょっと待て、そう言って、金のリボンを一本奪った。

「…ほら、取りあえず進呈だ」

 互いに互いを分け合おう。


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鎖骨

 あっちィ、そう言って彼は机に突っ伏した。
 制服の上着を脱ぎ捨てて、タンクトップ一枚の姿で。
 スッキリとした首から肩へと流れるラインや、程よく筋肉のついた焼けた二の腕が露わになっている。

「お前、ほっせェなあ」

 傍らにいた学友が笑って、クイとその襟元を引いた。

「いやん、エッチ」

 ふざけて身をくねらせた彼、ほんの僅かな時間に俺の目に焼き付いた。
 見た?と悪戯に見上げて来る彼の眼と、くっきりと浮き出た綺麗な鎖骨。


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