たわいない嘘 |
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俺の真剣さは間違いなく先生に伝わったはずなんだ。だって、初めに告白した時に、見事なまでに固まってくれてたから。 それは拒絶の為だったのか、それとも予想外の言葉に脳がフリーズした為か。 俺は後者に賭けてその場を去った。 けれど、結果はどうだ。先生は俺の度重なる告白を軽くいなし、全く取り合ってくれない。 今だって採点を続けながら、片手間に俺の話を聞いている。 不幸中の幸いか先生は俺の事を嫌ってはいない。『好きだ』と口にする度に先生の目に浮かぶのは軽い動揺と憐憫。 軽口を返しながら、俺が決定的に傷ついてはいないかと窺っている。それは教師としての責任というよりも一個人としての好意のように思えた。 いや、それは俺のそうであって欲しいという願望でしかないのだろうか。
「センセってさ、俺のコト、嫌い?」
クラス担任というわけでもない、ただの授業担当だ。
「じゃあ、好き?」
ついに先生は、何度かは飲み込んでいたらしい溜め息を溢した。
「…っ、ゴメ…っ。
先生が指さしたのは数3の応用問題。こんなの普通じゃ解けるわけない。
「…ねぇ、俺、迷惑?」 ついに先生はペンを置いた。俺を扱いかねていると言うように眉尻をやや下げて口を引き結んで。硬質な顔。そんな顔、させたいわけじゃないのに。
「…ンな、情けない面、すんな。
さっき先生に言われた問題。俺も先生も解けるなんて思ってない。
「これが解けたら、俺のコト、好きだって嘘言って」
そのとき俺は、余程同情をひく顔をしていたんだろう。 「…わかった」 きっと貴方が口にすることのない、他愛ない嘘。
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