なにげない仕草 |
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夫婦と子供が暮らせる部屋。 今座ってるソファも三人くらいで座れるものだし、部屋の数も多い。明るい光に満ちている空間は、子供が駆け回れるだろう充分なスペースが確保されている。 それが先生の住んでる家だった。先生はこんな家に住んで、幸せな家庭を作るはずだった。一度は消えてしまったそれでも、俺とこんな関係にならなければ、きっとすぐに次の家庭を作れるだろう。 二年。その月日は奥さんの思い出を幸せなものに昇華させた。もう新しい恋をする準備は整っていたんだ。その矢先に、現れたのが、俺。 もしかして、俺は先生を不幸にするんじゃないかと思った。 狼狽する先生のために、奥さんの写真に宣戦布告、なんてしてみたけれど。
「…金子?」
クイッと服の端を引っ張られて、先生に意識を向けて驚いた。
「…っ、やっぱ、俺が嫌になったか…?」 傷ついた風に俯いた先生は、今まで付き合ってきた女たちみたいに簡単に泣きはしなかったけれど、何か後悔しているのは真っ直ぐに伝わってきた。
「俺センセ好きだよ? 奥さんのコト大事にしてるセンセ、イイと思う。
俺にはまだ遠いような結婚の二文字が、先生にはごく普通に日常にある。多分、大人と子供の差って、こういう物事の捉え方に凄く影響するんだと思う。
「…何、言ってんだ。
大人って、何で平気で感情と理性を切り離せるんだろう。俺と別れたくなんかないってその眼は訴えてるのに、口にするのはその逆の事ばかりだ。
「そんなこと言うんなら、引き返せないとこまで行ってやる…!」 10センチほどある身長差も座ってしまえば大したものじゃなくて、容易くソファに組み敷く事ができた。
「か、金子!」
途方に暮れたみたいな表情、言われて、思い当たった。
「…………ダメ?」
長い沈黙の間に俺が何を考えたのか、先生は明確に読み取ってくれた。それで、譲歩してくれた。本当は、先生だって挿れる方がいいに決まってるのに。 「…大丈夫だよ。酷いこと、しない」
チュッと額にキスを落として。
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