BLUE-HEAVEN 2 |
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Jの脚に繋げられていた、重たい鎖は外された。それがジャラン、と音を立てて床に落ちたとき、Jは複雑は表情でそれを見つめていた。今までJの自由を奪っていたそれは確かに煩わしいものであったけれど、それ以上にキッシュに拘束されているのだという実感をJに与えていたからだ。 でも、もう必要ないとキッシュは言った。 Jにとってキッシュの言葉は絶対になっていたから、(そもそもそんなものに繋いでいて欲しいと思う事が尋常ではないことぐらい分かっていたので)それに逆らう気はなかったけれど、何となく心許ない気分になってしまった。 「…不安か?」
くしゃりと髪を撫でられ、いや…、と小さく呟いた。不安に思うことはない、ただ、何となく頼りない感じがするだけで。 「鎖までは、いらないだろう?」 キッシュは悪戯に笑いかけて、頬を染めたJに口付けた。別に鎖を付けられた事が嬉しいわけではなくて、キッシュが自分の事を考えてくれた事が嬉しいのだとJは弁明しようかと考えたが、そんなことは口に出さなくても伝わっていそうだと思い直し、ただ、キッシュにしがみ付く腕に僅かに力を込めるだけにした。
「ありがと」 冷蔵庫にグリーンサラダがあるとJは言った。オレンジを使ったドレッシングも冷やしてあって、教えたか?とキッシュは首を傾げた。
「作ってんの、見た。
余計なことだったかとJは尋ねて、仕事が減って楽になったというキッシュの言葉に安堵した。その表情を見て、まるで子どものようだと思う。30にもなる男に向けるべき印象ではないが、まるで犬の耳と尾が見えそうだとキッシュは含み笑いをした。 「どうした?」 穏やかに声をかければ、なんでもないとJは頭を振って、それでも答えを求められているのだと気がつくと眉を寄せて口を開いた。 「半月なんだな、と思って」 半月したら、キッシュはこの部屋からいなくなる。きっと帰ってくると信じているけれど、どれくらい不在になるのか分からない。絶対に忘れないように、その背中を目に焼き付けておこうと思ったのだと。寂しいと感じても、この目は主人の姿を捉えられるように、細部まで覚えておこうと。
「…馬鹿だな、お前は…」
愛おしさに負けてJを抱きしめたくなったキッシュだったが、一度触れてしまえば暫く離せなくなることはわかっていた。だから、食事が済んでからだ、と自分に言い聞かせる。自分は兎も角、Jに食事を抜く習慣を付けさせてはいけない。ただでさえ今後自分が面倒を見てやれない時期が続くのだ、少しでも食べ物を欲する身体にしてやっておかなくてはいけない。
「もうすぐだからな、待ってろ」 背中を向ければやはり感じる視線。それでJが満足するというのであらば、好きにさせようとキッシュは作業を再開した。
相変わらずJの声は聞こえるか聞こえないか程度しかでなかった。性交の間は声帯が萎縮しているとしか思えない。Jにこんなセックスを教えた人間をキッシュは許せそうにない。 「あ…っ、も、…っく…!」
Jが好むのは正常位だった。恐らく加減して抱きついているのだろうけれど、逐情の瞬間だけは全力になる。それでも、爪などは絶対に立てようとしなかった。
「いい、イけよ」 促すというよりはねだると言った方が正確なJの声に、キッシュは乗ってやることにする。グラインドを早くすれば、耐えられないと言わんばかりに背を仰け反らせて、声を上げないまま達した。その収縮に促され、Jの体内に吐精する。ブルリと、Jが身を震わせた。 「…っ、は、…はァっ、んぁっ」
質量の落ちた熱を引き抜けば、その狭間からとろりと体液が零れ出て、その感触にさえJは反応を示した。敏感な身体は、しかし淫乱ではない。
「大丈夫か」 だから何も心配するなとキッシュはJの髪を撫でた。Jは言葉を失って、じっとキッシュの顔を見つめた後に、フッと横を向いた。照れている。
「…どうした?」
それが嬉しかっただけ、とJは小さな声で告白する。
「…J。
上にYシャツだけを羽織り、Jの視線が泳ぐのを防ぐ為にJの隣のシーツの間に滑り込む。
「俺がいない間、シルビアにお前の面倒を頼んでいる。 キッシュの話はこの部屋の持ち主が帰ってくる事を前提にして進められており、ならばJは全てを一人でやって、キッシュの帰りを待ちたいと答えた。 「…俺は、まだお前を部屋から出すつもりはない。だから、買い物だけは他の人間にやって貰う事になる。それでもいいか?」
否などと答えるわけがない。
「…そうだな、もし帰らなかったとしても、後の事は全部シルビアに任せてある。
キッシュの最後の問いに、Jは眉を寄せた。
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