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俺はクラスの男に惚れ込んでいた。高校入ってから今までの三年間、ずっと同じクラスの奴。背は180近くあり、バスケをしている為にしっかりと筋肉がついている。日に焼けた浅黒い肌に似合いの、きつい眼とさわやかな笑顔を持つ、イイ男だった。 俺はと言えば水泳部所属で、矢張り筋肉はついている。高校二年のケツに一気に伸びた背は同じく180ちょいあって、それなりに女にもモテル。今はフリーになってるが、二週間前まで髪の長い美少女と付き合っていた。勝気な性格だった彼女は、『アンタはあたしを、一番に愛してくれない』そう言って俺を捨てた。 そう言われたってしょうがない、確かにずっと、俺の心を占めているのはアイツだけなんだから。
「裕輔、一緒に帰ろうぜ」
声を掛けてきたのは矢嶋慎吾で、目下俺の片想いの相手。試験週間中の今は、当たり前のように一緒に帰ってる。
「あ、昨日新譜買ったんだ。
にっと笑えば、俺もまだ聴いてねぇんだ、お前と聴こうと思って、とくる。
「うっせェな、どう聴こうが俺の勝手だろうが」 威嚇、ではなく拗ねられた女子生徒は呆れて、鞄のポケットから飴玉を取り出した。
「機嫌、直しなさいよ」
そういえば、今日は金曜だったと思い出す。
「お前ントコ本格練習できんの、今のシーズンだけだモンな。
俺も慎吾もそっち系に推薦が決まっている。同じ体育大学に進学する。
「お前、ウチ来いよ。着替えくらい貸してやるし」
苦笑して分かったと頷く。
「別に服くらいこのまんまでいいって。
だから、裕輔、メシ作って。
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俺たちが好きなミュージシャンが出した新しい曲はちょっと切ない恋の歌で、何が嬉しくて慎吾は男二人で聴いてるんだろうかと俺には思えた。 『君を愛した ただ それだけでいい』
一体どんなシチュエーションで生きてくればそう思えるのか。
「慎吾、俺、飯作りに行くけど。 全然大したモン作れねーケド。けど、家庭科の成績が欠点ギリだった慎吾よりはマシで、ついでに俺は兄弟と当番制に週一で飯を作ってる。隠れた得意技を知ってるのは、学校では慎吾くらいだけど。
「オムライス食いてー。
実はトマトの缶詰も買ってある、と慎吾は笑った。いつかウチで作ってやった簡単な料理で、どうやら慎吾の好みに合ったらしい。随分計画的に俺に料理させる気だったんだなと呆れると、だって慎吾以外に俺に飯、作ってくれる人いねーモンと口を尖らされた。
□■□ 「…慎吾〜、俺もう寝るぞー」 一人プレステ2のめまぐるしい画面に見入っている慎吾に声をかける。俺も途中までは参加していたけれど、もう午前三時だ。俺は飽きた。
「えー、俺一人で起きてんのかよ、つきあえよー」 ツンとそっぽを向いてやると、ブハハハハと慎吾が吹き出した。
「お手入れしてんのね、だから裕子サンそんなに美人なのねっ」
そんな訳はない。男が肌の手入れして何が楽しい。180前後の野郎二人でオネェゴッコという虚しい遊びは早々に切り上げて、遠慮もなく慎吾のベッドへと潜り込んだ。他に寝具もない、まぁセミダブルのベッドのようだ、多少狭っ苦しいが寝れるだろう、慎吾のいない今なら。
「ちょっと置いてかないでよー。
ゲームをやめて俺の方を見る。 「…あのなぁ、男が男に美人とか言われて、喜べるかっつーの」
イヤ、嘘。 「……おい…?」
だんだんその目が鋭くなってくるのを、妙な高揚感の中で見てた。
「………お前、実は趣味悪いだろう」 自分で言うのは切ない。でも、事実だ。
「ちげーよ、男なんてどーでもいいっつの。 …それはやっぱり女の趣味も悪いって事じゃあないだろうか。確かにミキちゃん、あぁ、今の慎吾の彼女だが、も、かなり勝気な顔立ちはしているようだったが。
「…………で。 だんだん沈黙が長くなるのは許して欲しい、緊張と期待が綯い交ぜになって俺を攻めて来るんだ、テンパって馬鹿な事を言わないようにするので精一杯だ。 「ヤらせてって言ったら、裕輔俺と友達やめる?」 …お前の太い神経に乾杯だよ、慎吾。普通の男なら、その言葉を聞いただけで友達をやめられる。それとも何か、俺の思いを嗅ぎつけて、揶揄ってんのか。
「実は俺、裕輔に一目惚れなんだよねー。俺の理想の顔具現化っつーかさ、何で男なんだって、一時は本気で思ったりして。
いやでも、いやならもう絶対言わねェし、絶交とかだけは勘弁なんだけど。
「…ぷっ、…くっくっく…。 よっこいせ、と一度横にした体を腹筋で起こして、慎吾をベッドに引き上げた。 「俺もお前のコト好きだから、絶交ってのはあり得ねーよ」 お前の告白も、俺的にはあり得ねーけどな。
「ゆ、裕輔?」
だから今日はなんもしないで、寝ろ。
「…うわ。
呆れて髪の毛を引っ掻き回してやった。
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