BLUE-HIGH

 一応抵抗をして見せたJを、キッシュは易々と捻じ伏せた。そう、Jのした抵抗は本当に一応というに相応しいもので、既に両腕は封じられていた為ただまな板の上の鯉の如く身を捩って見せたり脚をバタつかせてみたりといった、駄々を捏ねる幼児のような仕草だった。
 恐怖に慄いているJを尚煽り立てるように鋭利なナイフでもってJの衣服を切り裂いていく。黒でまとめられていた機能性を重視したパンツとシャツは、ものの1分とかからず襤褸切れと化した。

「此処から出て行く時は、俺の服を貸してやるよ」

 Jの体には、仕事をこなす為の筋肉がついている。背も180を超えており、体型バランスは良かった。但し、モデル向きではない、舞台に立つ為にはその体はごつ過ぎた。

「いい体してるなァ、悪くない」
「…っっ」

 キッシュの指が腹筋の割れ目を撫で上げて、胸筋の上でタップを踊る。Jよりも幾分華奢なキッシュの手。他人の肌に慣れていると、Jに教えていた。

「お前、男相手は初めてか?」

 こんな仕事をしているからには、1度や2度、こういった経験もあるんだろう?
 そう言うキッシュ自身には他人に組み伏せられた経験など無いのだが、今まで忍び込んできた男たち、女たちの幾人かは、レイプによる粛正を受けていた。動きを封じてみれば分かるものだ、死を目前としていながらも、過去の恐怖に囚われているという事くらいは。
 そしてJもまた、例外ではなかった。

「…分かってて…っ、悪趣味にも程がある…っ」
「だから選択肢に入れた、死の代価として」

 それなりに、相応しいだろう?
 笑って見せる顔は既に自分を暗殺しに来た者へというよりも、寧ろ哀れな下僕に対するものに近い。失敗をした下僕に対するお仕置き、そんな程度の軽さ。威圧感こそあるが殺気や怒気は欠片もなく、漸くJの恐怖心は解け始めた。

「たっぷり悶えな」

 首筋に吸い付かれ、Jは体を強張らせた。肌に当たる唇の感触が柔らかい。温かな舌が何度も肌を舐り、硬質なエナメルが痛みと快さの狭間、そんな刺激を与える。歯痕と紅斑を残しながらキッシュは移動し、下着の上からJの雄の証に触れた。
 全く反応を示していない其処を唇で食み、大きく舌を使って嘗め回した。

「あ…っ、ウ、ソだろ…っ」
「何が?」
「ンゥ…っ、ちょ…っ、ヘンタイか…っ」

 Jは、自分は女の代わりに犯されるのだと思っていたのだ。問答無用で後ろを掘られ、滅茶苦茶にされるのだと。
 それは過去された事のあるレイプから得た知識で、Jを犯した男たちは、誰一人としてJの雄になど手を伸ばしてはこなかった。
 なのに今、キッシュはJを唇で愛撫している。

「俺は喚かれるよりも、喘がせる方が好きなんだよ」

 ケツでイかせてやるぜ?
 考えようによってはこの方が余程非道なのかも知れない。レイプされた挙句の射精。男のプライドなど、微塵に砕け散るだろう。そこまで考えての事なのか。
 変わらず薄く笑みを刷いているキッシュは、話が済んだのならと再びJの熱を追い上げていく。キッシュが舌を使うたび水音が耳に返り、Jの羞恥心を煽っていた。

「ン…っ、ふ、ウぅ…っ」

 せめて声は立てるまいと、唇を噛んで枕に頭を押し付けている。
 本音を言うならば布一枚隔てた感触はどこかもどかしく、いっそ直にしゃぶって欲しかった。
 けれど、それを口にするのは憚れた。レイプされている最中に強請るなど、あって良い筈がない。自分自身、それをしてしまえば今後立ち直れるとも思えない。快楽に屈しようとしていることなどキッシュには筒抜けなのだろうが、そんなこととは別の次元で何かが終わってしまう予感があった。

「も、やめ…っ」
「止めて、いいんだな?」
「……ぁっ」

 ゾクリ、とJの背中を悪寒が走った。
 もう、限界が近い。布の上から雄に歯を立てられ、危うく達しそうになった。腹筋が引き攣れているのが分かる。こんなに容易く、屈したくはない。
 いや、キッシュを受け入れる事を選んだ時点でJはキッシュの支配下にあるのだ。ただ、僅かな抵抗をキッシュに許されているだけで。いっそ全てを封じて、何も考えられないくらい酷くして欲しい。いつまでも理性から解放されないまま、身体だけが狂わされていく。
 キッシュの持つナイフによって最後の下着が切り裂かれ、Jの身を隠すものは何もなくなった。今度は、後ろを触られるのだろうか。

「相当不安そうだな?
 いきなり突っ込むような真似はしない、安心しろ」
「ひ…っ、あぁっ?
 ま…っ、あァあ…!」

 柔らかな濡れた感触が双丘の間を這って、まさかと思いながらも首を上げた先にはキッシュが自分の尻に顔を埋めているという光景があった。嬲られる感触に身悶えながらも、自分の目が信じられずキッシュを凝視してしまう。

「…何だ、見たいのか?」

 視線を感じたらしいキッシュは一度顔を上げ、Jの下半身を抱え上げた。Jの脚をJ自身の顔の横に着くよう体重をかけ、再び窄まりへと舌を伸ばす。

「あ、あァ…っ、いや、だ…ァ!
 たの…っ、許し…っっ」

 見せつけられる、後ろを弄られている様を。そして、尚萎えもせず快感を表現し続けている雄を。Jにとって痛み以上に耐えられない無様な己の姿。Jには被虐趣味はなかった、Jにとって残念なことに。

「許す?
 この体勢を止せということ? それとも、イかせろということか」

 視線で人を殺せればいいのにと思った。そして、今夜の仕事をしくじった自分を呪った。
 答えを聞くまで手を止めるつもりはないと、キッシュの目が言っている。青い青い眼。この眼に感情を見つけてしまった事が、自分の一番の災難かも知れない。同情なんて慣れない事をしていないで、一思いにあの世に向かえばよかった。

「…クソヤロー…、テメーなんか、死んじまえ!」
「…上品な口だ」

 絶え絶えの息の間から罵れば、青い目をすぅと細めた。ただでさえキッシュの面立ちは整っている。甘さを欠いた男性的な容貌は、それだけで随分と恐ろしく見える。
 怒らせてしまった、とJは身を硬くした。

「ぐぅ…っ、イテェ…っ!」

 その瞬間を狙ったようにキッシュの指が窄まりにねじ込まれた。力が入った状態のソコは、酷く異物を嫌がり、Jを苦しめた。

「痛い方が、いいんだろう?」

 キッシュはサディストだ、とJは苦悶の中で思う。後ろでイかされるよりはマシかも知れないが、何もこんなタイミングを狙わなくても。

「うぅ…、く、…っグ…ッ」

一向に緩まないそこを無遠慮に掻き回され、Jは苦痛の呻きを殺し損ねた。

「俺は痛いよりは、気持ち良い方が楽だと思うんだがな」

 …俺だってそう思うぜ、普通なら!
 半ばキレかけたJだが、身体の何処も自由にならない現状では反論すらままならない。ひたすらキッシュの与える刺激をやり過ごそうとするばかりだ。

「お前くらいの歳になると、柔軟さも減るもんかな」
「う…っ、ガァ…ッ。
 や、めて、くれ…っ」

 増やされた指、ますます激しく掻き回される。苦痛ばかりに支配されているJを哀れんでか、キッシュは溜め息をついた。

「…手のかかる男だ」

 本腰を入れてJを追い上げることにしたらしい。今まで以上に繊細な愛撫、左手はJの雄にかかり、内に潜る右手は慎重にJの腹を探り始める。Jが快感を訴え始めたのは、それから間もなくだった。
 正確には、感じている事を隠そうとし始めたのは。

「ふ…っ、んぅ…っ、ぁぁっ」

 甘さを帯びたJの声、時折身体をビクつかせるのは決して痛みからではない。頭を擡げている雄からは、色のない液体が滲み出ていた。

「やれやれ、漸くか」
「ひぁ…っ!?
 あァーっっ」

 悶えるJの動きを封じて、キッシュは押し入った。半ば以上無理矢理に、しかし切れてはいないとJに告げて。

「あ、あァ、イ、てぇ…っ」
「すぐに好くなる」

 耳元で囁かれ、その自信はどっから来るんだとJは朦朧とした意識で罵った。酷い圧迫と異物感、吐き気までするのに、一体どうやって快感を見出せと?

「…ホラ、此処だろう」
「…!?
 え、あ、あァっ、ちょ…っ」

 女で言うGポイントだろうか。突き上げられながら片隅に思う。
 うっかり上げてしまった声はもう堪えようもなく、キッシュが出入りする度に嬌声を放った。気持ちが良い。

「ア、うあっ、……っっ!」

 最後の意地、と強請るような事は言わないつもりだったが、実際にはどうだったのか。
 終わる頃には意識の飛んでたJには、判断の仕様がなかった。


強姦モノ?
大してエロくもなく。
もう少し続きます。

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